2000 鳥海遠征 ”悪夢の日向川”

 
[報告者] 平江 誠
釣行日:2000/4/30 〜 5/ 2



 
 待ちに待った今期初釣行がやってきた。 ゴールデンウィーク2日目の 4 月 30 日から 2 泊 3 日で、 秋田県と山形県の境にそびえる鳥海山の麓を流れる日向川を釣る事にした。 今回の釣行にあたり山形山岳渓釣会の斎藤金也氏より事前情報を仕入れたが、 例年であれば入れる筈の沢もおあずけをくうほど今年は雪が多いとの事。 街中にはさすがに雪はなかったが山肌には残雪がかなりみられ、 林道脇のあちこちに大きな塊が残っている。

 日向川沿いの土手に車を止め、 今期釣行の安全を祈り杯を交わす。 (午前 4 時)今回のメンバーは風邪で体調不良の"どろがめ田宮氏"の欠席により、 渓遊会会長の岩橋氏 ・ 肇氏 ・ 瀬畑Jr氏 ・ 私の 4 人の参加となった。 辺りもすっかり明るくなった頃、 暫しの仮眠をとる。 今回はいつものあわただしい源流釣行とは違い、 キャンプ場のバンガローをベースに周辺を釣る予定なので、 気持ち的にもかなり余裕がありのんびりできる。

日向川(鳥海山をバックに)

 本流を林道沿いに走らせ、発電所脇に車を止め支度にかかる。本流は雪代で増水ぎみだが大石が点在するポイントがあちこちみられ、さかなも期待できそうだ。
 会長と肇さんは本流の大物狙いで、下流堰堤の大きなタルミへと向かう。 瀬畑Jrさんと私は上流へ向かっての拾い釣りとなった。 瀬畑Jrさんはこの時期からもう ” テンカラ釣り ” だ。

 両岸が 50 m 程離れていて徒渉もそうそうできないので、 両岸に別れて釣り上がる。 がしかし魚影は薄く、 たまに釣れてくるさかなは 20 cm にも満たない放流サイズばかりである。 ふと振り返ると、 対岸に居たはずの瀬畑Jrさんが同じ岸の後方で納竿の合図を送っている。 車止めに戻ると大物狙いの 2 人は既に着替えを済ませ、 ビールまで飲んでいる。 釣果を尋ねると、 魚信は全く無く 30 分程で切り上げて来たらしい。


 場所を下流に移した本流釣りの二人は、 遡上物のサクラマスを狙うとの事でやる気満々だ。 瀬畑Jrrさんと私は支流の小沢に入ることにした。

 適当なところで車を止め釣り始めるが、 餌釣りの私にはポツポツと釣れるもののいかんせん型が小さく結局キープサイズは出なかった。 テンカラの瀬畑Jrさんはアタリの ” ア ” の字もないとぼやいていた。

 集合場所に戻ると本流釣りの二人が ” ハヤ ” しか釣れないのに入漁料 1700 円も取られたと怒りまくっていた。  ( それにしても入漁料 700 円の現場売り 1700 円はチョッと高いんじゃーない? ) しかし、 入漁料を取られっぱなしで黙っている我が会長ではない。 なんと入漁券の日付を明日にしてもらったらしい、さすがだー。

 相方の肇さんも只者ではなく、 釣りをしながらナンパ ( 決してオネーチャンではありません ) をしたらしく、 横浜から一人で釣りに来ていた若者に声をかけ、 予約していた宿までキャンセルさせ、 3 日間を一緒に過ごす事となった。 そのうえ渓遊会に勧誘し入会の約束まで取り付けてしまったのだ、さすがだー。 ( 黒川くん、考え直すなら今しかないよ!!) ・・・・・会員一名ゲット!!

 買い出しに向かったスーパーでは、なんとサクラマスが 980 円で売っていた。 肇さんは 「 何ーんだ、 最初からここに来ればよかったなー 」 と笑っていた。 買い出しを終え、 予約をしてあったキャンプ場 ” 家族旅行村 ” に向かう。 先程釣りをした小沢の上にあり眺めもいい。 肇さんの話しではテントに毛が生えた程度だということだったが、 実物はコテージ風で木の香も新しい暖房付きの立派な部屋だった。 1 泊 3000円也。

 夕飯の下拵したごしら えも終え、 宴会が始まった。 イワナこそ無かったものの、 肇さんがあらかじめ栃木で採ってきてくれたコシアブラのてんぷらが最高のつまみとなった。 黒川君の自己紹介では、 30 歳で釣り歴 5 年ほどで主にヤマメ狙いだそうだ。 源流の経験はないものの、足腰には自信があるとの事。(頼りにしてますよ!!)釣り仲間が欲しかったらしく、 今回のナンパ攻撃にはたいそう喜んでいた。 ゴールデンウィーク中東北をのんびり釣り歩く予定らしく、 皆うらや ましがったがそこは独り者の強みである。 普段はなかなか休みが取れないようで、 仕事に精を出しているらしい。
それにしても楽しい仲間と飲む酒は、 皆に至福の時を与えてくれる。四方山よもやま 話しに花を咲かせ盛り上がるが、 長旅の疲れからか 11 時には終宴となった。

妙にかしこまる渓遊会4人組 ナンパされた黒川君(左から2番目)

 翌朝はのんびり 7 時 30 分の起床となり、 発電所手前の橋に到着したのは 9 時過ぎであった。 黒川君を含めた本流釣り三人組みは、 林道沿いに上流を釣るようだ。 (ピンポイントでスーパー( 980 円のサクラマス)狙いという話しもあったが?)

 瀬畑Jrさんと私は支流の熊沢川に入るため本流組みと別れ、 林道の終点に車を止めた。 既に 1 台の練馬ナンバーが止まっていて、 たった今車から出たばかりらしく 20 mほど先で竿を伸ばしていた。 他にあての無い私たちはどうしてもこの沢を諦められず、 交渉するために後を追った。 この沢は上流で二股に分かれているので、 どちらかを選んでもらい残った沢を釣ればいいだろうとその旨伝えたところ、 意外にも 「 先へどうぞ 」 とあっさり譲ってくれた。 おまけに 「 自分は釣れなくてもいいんだ 」 などと言っている。 不思議な釣り師もいるものだと話しながら、 二股まで釣らずに上流を目指す。

 およそ 30 分ほどで二股が現れた。 左の沢には 50 mほど先にスノーブリッジが架かっているのが見え、川幅も狭くその先にも雪渓が続ききそうな雰囲気を漂わせている。 迷わず右の沢に入り、そこから竿を出す。 すぐにイワナが掛かるがリリースサイズばかりだ。 リリースを繰り返しながら暫く釣り上がるとスノーブリッジが出現。 大分解けていて崩れそうな感もあったが、 上に乗ってみると意外としっかりしていて楽に越えられた。

 そこからは型も良くなり、 楽しく釣り上がる。瀬畑Jrさんは今日もテンカラ一筋だがアタリは一向にない様で、とうとう 「 平江ちゃん、がん玉くんねーかい。」 といって 毛鉤を沈めて釣りだしたが、 時期が早すぎたのか瀬畑Jrさんの毛鉤にイワナが掛かることはなかった。

 時間も 12 時を回り最後のポイントとするが、 2 mほどの小滝で大きな淵があり、 右岸の大岩のエグレにいかにも大物がいそうな感じがする。 しかし釣れてくるのは小物ばかりで瀬畑Jrrさんに 「 ここは大きいのは居ないんじゃないですか? 」 と言うと、 「 いや、絶対に居るから釣ってみな! 」 と言われ 20 分程粘り、 7 匹目にしてやっと真っ黒な 9 寸イワナを引き出すことができた。

 気分よく納竿とし車止めを目指すが、 雪渓手前で竿を落としたのに気付いた。 探しに戻ろうかとも思ったが、 何せ 1980 円の竿で使い捨てでもいいや、 と思いながらも去年1シーズン使ったので、 諦めるのに時間は掛からなかった。

 40 分程で車止め到着、 イワナを さば こうとナイフを取りに車に戻ると、 な、な、何んと運転席側の窓ガラスが割れているではないか。 閉めていたはずの瀬畑Jrさんのバッグも開けっ放しになっている。 「車上荒らしだ!!」。 不思議なもので、 あまりのショックに怒りよりも何故? どうして?といった気持ちが先に立つ。

 話しには聞いていたが、 まさか自分が被害に遭うとは夢にも思わなかった。 案の定、瀬畑Jrさんの財布は盗まれ、 私の現金も小銭まできれいに抜かれていた。 せっかくの楽しい釣りが、 この事件で一気に虚しい気分へと変わってしまった。


 帰りの道すがら瀬畑Jrさんの 「 平江ちゃん、寒いから窓閉めてくんない 」 の一言には参った。 私も閉まるものなら是非そうしたかったのだが・・・。 すれ違う人が皆、悪人に見えてしまう。

 午後は酒田警察での事情聴取で 3 時間も掛かってしまった。 その中で鑑識なるものを初めて目にしたが、 テレビドラマと同様に白い粉をパタパタと振りかけて指紋の検出を行っていた。 犯人は軍手を着用していたらしく、 指紋は出てこなかった。
手口から常習者と思われるが、 皆さんもくれぐれも気をつけてください!!

 気持ちを切り替えて、 買い出しを済ませキャンプ場へ到着。 夕飯の支度にかかった頃、 本流組みが戻ってきた。 いい釣りができたらしく、 会長の尺上を頭にいい型数匹をキープしていた。 何でも会長はもっとデカイ奴を掛けたものの、 仕掛けが木に引っ掛かってバラシてしまったとのこと。 それは 40 cmを優に越えていたらしく、 かなりの悔しがり様であった。

 夜は刺し身にてんぷら・岩魚汁とイワナづくしで盛り上がる。 会長が摘んできたタラの芽のてんぷらも絶品だ。 黒川君はイワナの刺し身は初めて食べたらしく、 「 美味い、旨い 」 を連発していた。
最高のつまみに、ついつい酒の量もすすみがちになる。 明日はもう帰りとなるが、 楽しい時間は過ぎるのが早い。 毎度のことだが、 「 後 2 ・ 3 日ゆっくりできたらいいのに 」 と思うのは私だけだろうか?
 本流組みは朝一勝負やるような話しになり、なんでも 4 時に起きるようだ。瀬畑Jr さんと私は遠慮してゆっくり寝かせてもらう事にする。

 翌朝三人は早くに出かけていった。 8 時 30 分に戻ってくるとの事なので、 瀬畑Jrさんと私は 8 時までゆっくり寝かせてもらった。 昨夜の宴の後片付けをしていると、 三人が戻ってきた。 釣果のほうは聞かなかったが、 釣りを楽しんだことだろう。 黒川君はこのキャンプ場がえらく気に入ったようで、もう 2 ・ 3 日泊まって釣りをするという。
「 おかげで楽しい旅になりました 」 と頭を下げる黒川君と記念撮影をした後、 別れの挨拶を交わす。 ( 今度は会の釣行で会いましょう。 ) 温泉で汗を流し、 栃木組三人と別れ秋田へと向かう。 窓ガラスの無い涼しい車で・・・・・。

お世話になったキャンプ場の前で



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