Fishing2006釣行記 田宮支障、白色岩魚との再会に喜ぶ[新潟県魚野川支流]
田宮支障、白色岩魚との再会に喜ぶ[新潟県魚野川支流]
 
  
[報告者] 瀬畑孝久
釣行日:2006/9/2〜3
 メンバー:田宮貴男、高久明夫
 瀬畑孝久、本宮和彦
 
 
 
 
 週末近くになると、決まって田宮支障からメールが入る。 その内容ときたら、「・・・で、週末のご予定は?」「土曜日、六日町でも行ってくっかなぁ〜 ひとりで・・・」というもので、どうやらしきりに私を誘っているようである。 今週は会の釣行イベントで黒部が予定されているが、会社に2日も有給休暇を申請できないメンバー4人が集まり、田宮支障が以前に幾度となく通った魚野川水系の渓へと出掛けることにした。
 
 AM2:00に田宮支障を拾って、日光から金精峠を越え、沼田ICで関越道に乗り六日町ICというルートで出掛ける。 毎年この時期は、下期の予算組みで忙しい私と高久さんは、いろは坂までは記憶があったが何時の間にやら寝入っていまい、気が付くと沼田まで来ていた。 本宮クンのパジェロに揺られ、眠ったせいで冷えたのかと思ったが、道路にある電光式温度計は6℃を指していた。 「やっぱり寒いな!」「薄手のダウンを持って来ればよかった・・・」など、テン場での寒さを心配する。

 車は快調に関越道を進み、六日町ICへと到着。 近くのコンビニで朝と昼の食料を仕入れることにした。 コンビニの入り口には「入漁券取扱所」の看板があった。 「車止めで着替えてると、オヤジが軽トラで日釣券を売りに来るんだよな〜!」と田宮支障。 現場売りの高い日釣券を買わされてもつまらないので、ここで一緒に買うことにした。 レジのオバちゃんに「日釣券4枚下さい!」と頼むと「鮎ですか?」との問いかけに「岩魚とか山女魚の日釣り券を!」と答えた。 一人1,000円程度だろうと思っていたら、オバちゃんの差し出す券には“2,100円”の文字が! 慌てて他のメンバーにあと1,100円の追加を伝える。 よく見ると、何と“現場交付3,150円”とも書かれおり、特設解禁並の金額にビックリした。 これだけ払えば、さぞかし釣れるのだろうと、期待を胸に車止めを目指す。

 田宮支障のナビゲーションで、車止めとなる取水堤に向かうが、林道の途中で通行止めの看板が出現。 取水堤までは、あと1時間程掛かるようだ。 朝食を摂りながら釣り仕度を済ませ、いざ出発! 



車止めから取水堤までの林道歩き


 最初本流の左岸にある林道は、然程さほど大きくはない永久橋を渡り右岸へと続く。 この先、何箇所か道の路肩に亀裂を発見する。 このいつ崩落するか分からない亀裂ために通行止めとなっているようだ。 対岸の山肌には幅数十メートルに渡って地滑りの痕があり、根こそぎ樹木を剥がされ剥き出しとなってる山肌が痛々しい。 ここ数年、立て続けに大地震や大雨が新潟を襲ったが、早くもその爪痕を目の当たりにする。

 やがて取水堤に到着し、藪を抜けて沢へと降り立つ。 最初のうち暫くは平瀬の河原が続くが、ここにも沢山の流木あり、出水の爪痕が目立つ。 「此処のイワナは白いんだよ!でも残っているかな?」と田宮支障。 イワナの安否を気遣っているようだ。

 最初は穏やかだった渓相もゴーロ状に変わり、やがてゴルジュが現れ、厳しさを増してくる。 暫くすると2条8bの滝が現れ、左岸を高巻くことにした。


河原には沢山の流木、ここにも出水の爪痕が
2条8bの滝を高巻き終えたところで大休止


 何時の間にやら90キロを超す体重となった田宮支障は、「ヒー、ヒー!」言いながら歩を進める。 「俺の体脂肪率は40%だから、残り60%は筋肉だな!」と支障が言う。 「タコでもあるまいし、支障には骨は無いのか?」などとバカ話をしながらゴーロ帯を抜ける。 すると一転、テンカラ向きの渓相が広がり、このまま通り過ぎては勿体無いと竿を出すことにした。

 先ずは、今年入会したばかりで、竿を出したくて仕方ないであろう本宮クンにポイントを譲る。 好ポイントで本宮クンが竿を振るが、残念ながら魚の気配がない。 そこで高久さんが「ジュニア、手本を見せてやれば」と言うので、ザックから竿を取り出し早速仕掛をセットする。 カケ上がりにイワナの姿が見えないので流れに毛鈎を沈めるとラインが止まり、かさずアワセをくれると、右に左にラインが走った。 「魚、居たよ!」と声を掛けると、皆集まってきてイワナを覗き込む。 「ほらネ、白いだろ!」と支障が得意気に言った。 確かに此処のイワナは、他のものと比べて全体が白っぽい魚体をしていた。


高巻きの後、渓相はゴーロ帯へと変わる
ゴーロを抜けると、テンカラ向きの渓相へと変わる
上部にモヒカンのように草が生える岩


 「次は高久さんが釣りなヨ」と私が言うと、ザックを下ろすのが面倒なのか私の竿を貸してくれという。 サウスポーの高久さんは対岸で竿を2度3度振ったところで、枝に毛鈎を引っ掛けてしまった。 ラインを引っ張っると「毛鈎無くなっちゃったよ!」を2度繰り返し、毛鈎を取り替えるでもなく立っている。 余程ザックを下ろすのが面倒なのか、私に川を渡って毛鈎を届けろということのようだ。 幾ら人が良い私も(?)、竿まで貸しながら、沢を渡ってまで毛鈎を届ける程のお人好しではない。 「自分の毛鈎を使いなヨ!」と叫んでやると、仕方なさそうに渋々ザックを下ろして毛鈎をハリスに接いだ。 そんな面倒臭がりな高久さんがトロ場で毛鈎を流すと、突然イワナが水面を割って飛び出し、彼の毛鈎に喰らいついた。 自分の毛鈎でイワナを掛け、満足気だった。

 「そろそろ昼食にしようか」などと相談していると、本宮クンの姿が見えない。 やがて穂先の折れた竿を持って我々に追いついてきた。 「これ、使いなヨ」と私の竿を差し出すと、昼飯も食べずに釣りに夢中になっている。


水面を割って出たイワナをキャッチした高久さん
昼食もとらずに頑張った本宮クン


 昼食を終え、テン場を目指す。 開けた渓相から、また薄暗いゴルジュに突入する。 3b、2条3b、3bと3つの滝をやり過ごし、左岸から小沢が出合う。 田宮支障曰く、この出合の上にテン場をとるという。 ザックを背負って上がるには大変なところで、水汲みも面倒そうだ。 別のテン場を探しに、上流へと偵察に出掛けた高久さんが右岸の高台にテン場を発見。 水場からちょっと高いが、足場はシッカリしている。 皆で薪を集め、天幕を張る。 本来はここで「乾杯!!」といきたい所だが、今日は1泊2日の釣行で時間が無い。 早速仕度して、上流に釣りに出掛ける。

 仕度を済ませ、「さあ、出掛けるか」というところで田宮支障の姿が無い。 既に沢に降りているようである。 我々も後を追って上流へと進むと 「実は、此処からが魚影が濃い核心部なんだな」と真っ先に田宮支障が竿を出す。 下流は我々に譲り、魚影が濃くなる上流で竿を出そうと決めていたようだ。 しかし、そんな支障の目論見もくろみは裏切られ、一向に魚信アタリが無い。 そのうちに支障も「全然、釣れないな・・・」「魚居ないわけ無いけどな・・・」と疑心暗鬼となる。 最後には「お先にどうぞ」と選手交代を申し出る始末。 「下で竿を出してないんだから、1匹釣ったら交代しようヨ」と続行を促す。 支障の毛鈎が的確に好ポイントを狙うが、毛鈎を追う魚の姿は無い。 魚を求めて更に上流を目指すが、行けども行けども全く魚が走らない。

  「以前来たときは、ビックリするほど魚が走ったんだけど・・・」と支障は不思議顔だ。 一向に魚が釣れず、テンカラ竿を振り飽きた支障と私が交代する。 間もなく、流れに乗った私の毛鈎に8寸程のイワナがヒット。 上流のイワナは、先の下流部のものより黒い。 上流部は渓相も厳しく、岩も黒っぽいため、保護色としてイワナも黒っぽいのだろう。


「此処からが核心部」と、真っ先に竿を出す支障
魚影の濃い核心部のハズが・・・


 ゴルジュを抜け、魚止の10メートル滝を越えるとゴーロとなった。 以降、高久さん、本宮クンと選手交代しながら更に上流を目指すが、相変わらずアタリがない。 上流から冷気が流れてきて、雪渓の出現を予感させる。 ゴーロも終わると少しの間河原となり、沢が左に曲がった先で雪渓が現れた。 此処を少し過ぎたところで突然水が濁りだした。 どうやら上流で雪渓が崩れたようだ。 毛鈎では全く釣りにならなくなり此処で納竿。 時間も丁度4時となったところで、夕餉の支度にテン場へと急いだ。


魚止滝上流の河原に咲くオニユリ
左岸の山肌にシッカリと雪渓が
9月の雪渓前で記念撮影
おびただしい流木の源頭部


 テン場へと戻り、焚火を起こし、夕飯の仕度を済ませる。 一応準備が整ったところで、沢水で冷やしたビールを全部テン場へと引き上げ、乾杯!
 話も盛り上がったところで、支障が突然「上流でセバ君が岩魚を釣ってくれて良かった。魚が生き残ってくれてたのを確認できたから・・・」と嬉しそうに語った。 厳しい自然の中で生き抜く岩魚たちの生存に安堵し、またそれを心から喜んでいるようだ。


 二日目、朝食を済ませると、普段自分の食器すら洗わぬ支障が、河原に降りて皆の食器を洗っている。 天気は上々だが、皆口々に「今日は雨が振るゾ!」などと言って支障を揶揄からかう。

 パッキングを済ませ、綺麗に片付けたテン場を後にする。 天気も素晴らしく、快適に沢を下って行く。 途中にある4bの滝壷で、昨日田宮支障が尺2寸のイワナを見たという。 「俺達は此処で待っているから、竿出してくれば」と言うと、支障はそそくさと釣りの仕度を始め、滝下へと姿を消した。 暫く粘っていたが、残念ながら白色岩魚の大物は姿を見せることは無かった。


9月の冷たい流れに、胸まで浸かって通ラズを抜ける
昨日尺2寸を見たという、滝つぼで粘る田宮支障


 帰路の途中、河原で昼食を摂った時にも、田宮支障はゴミを片付けたり焚火を始末するなど、普段ではお目にかかれない行動を我々に見せた。 支障に何か心境の変化があったのか、それとも昨夜悪いものでも食ったのか、はたまたカルト宗教にでもまってしまったか、何時もの支障と明らかに様子が違う。 これは私の推測だが、これら支障の一連の奇異?な行動は、厳しい環境で生延びる白色岩魚との再会に喜ぶ、彼の優しさによるものだと思えてならない。

 関越道でハンドルを握りながら、釣行記と写真のことを考えていた。 私が田宮支障に「ところで、魚を持ってる写真、撮ってあげたっけ?」と聞くと、高久さんが「それは触れちゃマズイでしょ!だって支障はボウズなんだから・・・」の一言に、車内は爆笑となり、パジェロが上下に揺れた。 我々を乗せた車は、大笑いの渦とともに、関越道の長い長いトンネルへと吸い込まれて行った。


(せばた たかひさ)
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